何事かと豆を投げあっていた会長と藤岡のチームが手を止めた。
「じいや、一体どうしたの?」
会長がじいやに問い掛けるとじいやはおもむろに西原達のほうを指さした。
「残念ながら西原様チームのギルティ様が、鬼は外! と言うのをお忘れのまま豆を投げてしまわれました」
西原と原がギルに目を向けるといつの間にか千鉱の前に回ったギルが何処へともなくやみくもに豆を投げまくっていた。その姿はまるで千鉱を守っているんだとでもいいたげだった。
(あの大馬鹿野郎!!)
西原は思わず心で絶叫した。ちらっと隣を見ると原はただ呆れてギルを見ていた。
すると、話を聞いた会長の顔が嬉しそうな笑顔に変わった。
「それじゃあギルはバツゲームね♪」
皆が息をのむのがわかった。突発的な会長の思いつきから始まったゲームのバツゲーム……。 生徒会メンバー達は何度この気まぐれに泣かされたものか。
皆が苦い思い出を噛み締めていると会長が様々な食材とミキサーを持ってきた。手に持たれた籠には牛乳などの飲み物、色とりどりのフルーツ、各種の野菜、茸類、木の実に豆類、魚貝類、肉類が盛られていた。皆が不安に思っていると会長はギルに微笑みかけた。
「今回のバツゲームはミックスジュースよ」
ミックスジュースといえば好みの果物と牛乳を混ぜ合わせて作る飲みものだが、目の前のあらゆる食材からはそんな生易しい飲み物になるはずがないのは想像できた。
皆が固唾をのんで見守る中で会長はおもむろにジュースを作り始めた。
「まずは、……をベースにして、これには……をまぜて……」
なにやらぶつぶつと呟きながら籠から食材を取り出しミキサーの中へと投げ込んでいく。
「冬だし、牡蠣と河豚も入れてみましょう♪」
なにやら不穏な呟きが聞こえたが皆聞こえないフリをしていた。
ガキガキ、ゴリリリ、グチャベチャクチャ、ブブブブブ。
ジュースを作るときの音からは掛け離れた音が体育館に響き渡った。
「ねえ、会長毒取った河豚丸ごと入れたよね?」
ハニーは不安そうに西原に問い掛けてきた。
「ああ、河豚のスプラッタジュースか……」
どこか遠い目で西原が答えてきた。
「いや、私が見た角度からでは生のスペアリブと牛乳、オレンジが投げ込まれてたぞ」
いつの間にか隣にいた中桐が面白そうに答えてきた。
完成した物はもはやジュースではなく物体だった。いや、意味があって存在するものが物体なのであれば目の前にある物がなんなのかを説明できる者はいないだろう。果てしなく赤黒い色で禍々しいオーラを放つ「それ」はおもむろにギルの前に差し出された。
「さ、どうぞ?」
中々手をつけないギルに会長は不思議そう(面白そう)に首を傾げた。
ギルは覚悟を決めて「それ」を一気に口の中に流し込んだ。次の瞬間ギルはおよそ人間とは掛け離れた奇妙な動きを見せた後静かにその場に倒れこんだ。
「ギル!? 大丈夫?!」
あわてて千鉱がギルに駆け寄った。駆け寄った千鉱の手を取りギルは一言こう言った。
「口の……中に……宇宙が……」
とぎれとぎれに言い終わると意識を失ったようだった。
それを見ていた生徒会メンバー達の心が一つになった。
(((鬼は外! だけは忘れるまい……)))
動かなくなったギルをみながら西原と原は次の作戦を話しあいだした。
「まさか奴があそこまで馬鹿だったとはな。囮にすら使えないとは思わなかった」
倒れているギルに向かって西原は冷たい視線を投げつけた。
「いいえ、ギルの責任じゃないわ」
にこやかに原が続ける。
「彼のボンクラさを見抜けなかった私の責任ですわ」
にこやかな笑顔を崩さず原は次の作戦を西原に説明しだした。
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