「副委員長ォーーーッ」
ドバン、と戸を破り、過呼吸でも起こしかねない勢いで一人ワカモノ――といっても高校の委員会なので全員若者でないわけはない――が転がり込んできた。
「副委員長、大変なんですっ」
「ああ、何だお前この間の新入りか。んで、どうした?」
「それが…。あれ、皆さん揃ってますね?なんかあったんですか?」
いっこうに空気を解さない新入り。
今、最も触れられたくない話題に、委員長が目を逸らした。
それを睨みやり乍、副委員長が口を開いた。
眉間に皺が寄っている。
「お前も噂は聞いてるだろう?この馬鹿委員長が、生徒会の、よりにもよって西原に、喧嘩を売りやがったんだ。」
私の居ないうちに。
徐々に語気を強めて、忌々しそうに机の下で委員長の足を蹴り飛ばす。
委員長は悲鳴もないまま床に突っ伏した。
「あー、そりゃ駄目ですよね。一言断らないとー」
ケタケタ笑う新入り。
「いや、一応委員長なんですが…」
呟く委員長。
もちろん誰も取り合うわけなく。
唯一反応したと言えば、同情の視線を向けてきた副委員長一人だった。
「ところで、何が大変なんだ?」
のろのろと身を起こして、委員長が問うた。
新入り、しばし考えて。
「そうだ、飼育栽培委員会の奴ら、また茸を取り寄せてましたよっ」
「何だと!?」
「それは確かか!?」
「はい、奴らの委員長がっ!」
殺気立つ仲間を宥めるかのように、副委員長が立ち上がった。
「どれぐらいだ」
「はっ。…?」
「量を聞いてる!!」
「どれぐらい。えと、と、とにかく本当に大量でした!!」
新入りの言葉に、不意に殺気が消えた。
「もう、終りだ」
しばらくの沈黙の後。
ポツリと誰かが呟いた。
「この世の終りだ」
「奴らこの地球を征服する気なんだ!」
「俺達は死ぬしかない…」
「母さん…」
一人が呟けばそれは漣のように広がっていった。
ある者は絶望し、またある者は泣き出していた。
「アレは、世界を破滅させる」
軋りと、手近な席に委員長が腰をかける。
副委員長は、それに習って自分の席に座った。
「飼育栽培の委員長、というと?」
「……銀河、だ」
「銀河」
恐らく、一生忘れる事の無いだろう敵の名。
副委員長は、強く奥歯を噛み締めた。
「おのれ、」
「茸どもめッ!!!!」
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